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「避難所には行かない」——そう決めたのは、阪神・淡路大震災の経験がきっかけです。
でも、避難所へ行かない、と自分で決めてしまって、よいのでしょうか。
決めたあとで、国の手引きを読みました。いまの備えを、国の目安と並べてもみました。
1. あの朝のこと
あの日、夜明け前の大きな揺れ。
廊下の本棚が倒れ、寝室のドアをふさぎました。
何とか押し開けて最初に向かったのは玄関。外に出られるかどうか、ドアの開閉を確かめるためです。
次に向かったのはガスの元栓。漏れがないかを必死に確認しました。
その時点で、割れた食器や家具の散乱はもう二の次。頭の中は「安全の確保」だけでした。
この経験以来、私は家中のあらゆる場所に眼鏡を置くようにしています。どこにいても、すぐ視力を確保できるようにするためです。
さらに、枕元のスリッパは必須。ガラス片や木片で足を傷つけて歩けなくなる事態を防ぐためです。
自宅は半壊認定でした。ライフラインは3か月止まり、実家に避難しました。
戻った家は地盤が不同沈下し、やがて室内ドアと床の隙間からペンが転がり抜けるほどになりました。
地震後に家の修理を行っていましたが、結局建て替えになりました。
「3か月」は、私の記憶です。記録を確かめました。県全体の記録なので、わが家の日付ではありませんが、兵庫県の記録では、電気が戻ったのは1月23日、ガスは4月11日、水道の全戸通水は4月17日です(どれも、倒れた家などを除いた日付です)。地震は1月17日でしたから、ガスと水道は、おおよそ3か月かかっています。国の記録では、半壊した家は、約14万4,000棟でした。
2. 私が、行かないと決めた訳
あの時の暮らしの立て直しは、30代だったから、体力も気力もあったから、なんとかやり切れたと思います。
でも今、同じ状況になったら——年齢を重ねた体で、2羽の小鳥さんを連れて、慣れない避難所で過ごす自信はありません。
私は実家に身を寄せたので、避難所では過ごしていません。あのころ、避難所は、体育館に雑魚寝でした。プライバシーの無い所で過ごすのは、私には無理です。
家のほうの事情もあります。いまの家は、震災のあとに建て替えた家です。ある程度、しっかり建っています。立地の上で、水に浸かる心配は、小さいと見ています。心配なのは、火事ぐらいです。
だから私は、自宅で避難生活を送る「在宅避難」を選びます。
3. 決めてよいのか|国の手引きを読みました
国は、家で避難生活を送る人がいることを、前提にしていました。 ただし、「在宅避難者」という言葉の意味は、狭いものでした。
内閣府は、2024年(令和6年)6月に、「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」を出しています。そこに、在宅避難者とは誰のことかが、書いてあります。
単に災害時に自宅等で生活を行っている人を広く指すものではなく、災害によるガスや水道といったインフラの途絶や物流網の途絶、家屋への被害等のため、自らの備蓄を利用し、或いはなんらかの支援を受けて避難生活を送る人
家にいれば在宅避難、ではないのです。ガスや水が止まった家で、備蓄や支援で暮らす人のことでした。
同じ手引きには、重い一文もあります。
災害関連死が、避難所滞在中と比較して自宅等において高い比率で発生している
家にいれば安全、とは、国は書いていません。むしろ、家にいる人に支援が届きにくいことを、課題にしています。
首相官邸のページには、自宅に留まるかどうかの目安も出ています。ただ、読んでみると、それは、洪水の時に自宅に留まる(屋内安全確保)ための、3つの条件でした。家が流されるおそれのある区域に入っていないこと。水に浸かる深さより高い所に部屋があること。水がひくまで我慢でき、水や食べ物の備えが十分にあること。地震のあとに自宅で暮らせるかどうかの目安ではありませんでした。
ペットのことも、確かめました。環境省の手引きは、ペットと一緒に避難する「同行避難」を、こう説明しています。
避難所等において飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではない
一緒に逃げることと、同じ部屋で過ごせることは、別でした。
言えること=避難所へ行かず、自宅で避難生活を送る人がいることを、国は前提にしています。支援の手引きもあります。
言えないこと=「家にいれば安全」とは、言えません。家が安全かどうかは、家ごとに違います。そして、自分で決めていても、助けが要る時は来ます。
4. 決めたのなら、準備は自分で
避難所へ行かないと決めた人のことも、行政は、放っておけません。助けが要る時には、助けを呼んでかまいません。
そのうえで、自分で決めたことのために、行政や救助の方に、余計な手間や危険をかけない。これが基本だと、私は思っています。そこを、忘れないようにしたいのです。
私の場合、「もし家が使えなくなったら」に備えて、小鳥さんの大きなケージを積み込める車に買い替え、車中泊ができる仕様にしました。ベッド代わりのマットや小型冷凍冷蔵庫も積んでいます。
車で過ごす時に気をつけることは、厚生労働省が書いています。食事や水分を十分に取らずに、車などの狭い座席に長い時間座って、足を動かさないでいると、血のかたまりができて、肺に詰まるおそれがあります。ときどき軽い体操をすること、こまめに水分を取ることが、勧められています。
車の無い方は、親戚や友人の家、ペットと泊まれる宿など、家の外の行き先を、先に決めておくことになります。環境省の手引きも、ペットの一時預け先について「親戚や友人など、複数の一時預け先を探しておくことが望ましい」と書いています。
いつか、運転をやめる日が来るかもしれません。その時に、移動や避難をどうするか。いまから考えておくことだと思っています。
5. できている備え、できていない備え
国の目安と並べると、こうなります。
| 備え | 国や会社の目安 | わが家 |
|---|---|---|
| 水 | 1人1日3リットルを目安に3日分。大きな災害では「1週間分」が望ましい(首相官邸) | たぶん、1〜2週間分あります |
| 食べ物 | 3日分。大きな災害では「1週間分」が望ましい(首相官邸) | 足りていません。 すぐそのまま食べられる物が、ほとんどありません。加熱の要る物ばかりです |
| トイレ | 1人あたり35回分(7日分)(経済産業省) | 3日分ぐらいあります。家と、車にも入れています(渋滞にはまった時のため) |
| ペットの餌と水 | 少なくとも5日分、できれば7日分以上(環境省) | 人の分より先に切らさないつもりで、多めに置いています |
| 電源 | — | ポータブル電源があります |
| 通信 | — | スマホとルーターを、別の会社にしています |
| 災害用伝言ダイヤル「171」 | 毎月1日と15日などに、体験ができる(NTT) | 試したことがありません |
| 車で泊まる練習 | — | わざわざ試したことはありません。 移動の途中で車中泊になったことは、あります |
忘れやすいのが、非常用のトイレです。
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在宅で働く人にとって、電源の備えは、仕事を続けるための備えでもあります。
小鳥さんと暮らす家の備蓄は「多め」が基本
同じペットでも、犬や猫と、それ以外の小さな生き物とでは、災害時の事情がずいぶん違います。
ペットと一緒に入れる避難所があっても、想定されているのは、主に犬と猫のようです。小鳥さんのような子は受け入れ自体が未対応だったり、温度管理が難しかったりして、ハードルが高いことがあります。
支援物資も同じで、犬猫用のフードの差し入れは耳にしても、鳥用の餌が届いたという話はまず聞きません。
それでいて、体力も持久力も小さな体なりにしかない。だからわが家では、餌と水の備蓄は「人間の分より先に切らさない」つもりで多めに用意しています。
犬猫以外の子と暮らしている方は、「うちの子の分は外から届かない」を前提に備えてください。
在宅避難のよくある質問
ここから先は、よく寄せられる疑問への答えです。私自身の体験のほかに、この記事で調べた資料と、公的な情報をもとにまとめました。参考としてお読みください。
Q1. 在宅避難と避難所、どう決める?
A. 家が安全かどうかは、家ごとに違います。国の手引きは、家で避難生活を送る人がいることを前提にしていますが、「家にいれば安全」とは書いていません。むしろ、家にいる人に支援が届きにくいことを、課題にしています。首相官邸のページには、洪水の時に自宅に留まるための3つの条件(家が流されるおそれのある区域に入っていない・水に浸かる深さより高い所に部屋がある・水がひくまで我慢できる備えがある)が出ています。この記事を書いた私は、阪神・淡路大震災の経験と、建て替えた家の造り、小鳥さんのことから、在宅避難を選びました。
Q2. 家で過ごすなら、トイレと水はどれだけ要る?
A. 国や省庁の目安は、こうです。水は、1人1日3リットルを目安に3日分、大きな災害では「1週間分」が望ましい(首相官邸)。非常用のトイレは、1人あたり35回分(7日分)(経済産業省)。わが家は、水はたぶん1〜2週間分ありますが、トイレは3日分ぐらいで、目安には足りていません。家と車の両方に置いています。
Q3. 家にいても、配られる物や知らせは受け取れる?
A. 必ず届く、とは言えません。国の手引きは、家にいる人に支援が届きにくいことを、課題として挙げています。わが家では、スマホとルーターを別の会社にして、知らせを受け取る道を2つにしています。災害用伝言ダイヤル「171」は、毎月1日と15日などに体験ができます(わが家は、まだ試したことがありません)。配られる物や知らせの受け取り方は、お住まいの自治体の防災のページで確かめられます。
避難所へ行かない、と決めてよいのか
決めてよい、と私は思っています。国も、家で避難生活を送る人がいることを、前提にしていました。
ただ、決めるだけでは、足りませんでした。在宅避難とは、家にいることではなく、止まった家で、備蓄や支援で暮らすことでした。並べてみると、わが家は、水はあっても、すぐ食べられる物が、ほとんどありません。171も、試していません。
決めたのなら、そのぶんの準備は、自分でする。行政の方に、余計な手間と危険を、かけない。私の「行かない」は、そこまでがそろって、やっと言えることでした。
部屋に置いた備えのことは『同居でも「自分だけの空間」をつくる』に、物を減らす話は『健康寿命を意識した住まいと習慣』に書いています。
まず、食べ物からです。
この記事で確かめた文書
- 内閣府(防災担当)「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」(令和6年6月)
- 内閣府防災情報のページ「阪神・淡路大震災の概要」
- 兵庫県「阪神・淡路大震災の支援・復旧状況」
- 首相官邸「避難はいつ・どこに?」「災害が起きる前にできること」
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」(平成30年3月)
- 経済産業省「トイレ備蓄忘れていませんか」
- 厚生労働省「エコノミークラス症候群の予防のために」
- NTT西日本「災害用伝言ダイヤル(171)体験利用のご案内」
(確かめた日=2026年10月6日)













