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私は、回るお寿司なら、一人で行けるようになりました。焼肉は、まだです。自分の中で、ちょっと敷居が高いのです。
一人焼肉の店ができて、一人旅のプランも増えました。カウンター席だけのカフェも、おひとりさま歓迎と書いてある宿も、めずらしくなくなりました。
ところが、在宅ワークの記事には「孤立を防ぐためにコミュニティへ入りましょう」と書いてあり、年を重ねた人に向けた記事には「積極的に社会参加を」と書いてあります。
「一人が好き」は、直さなければいけないことなのでしょうか。
調べてみました。内閣府の白書と、国の孤独・孤立対策の計画と、一人で過ごす時間についての研究です。この記事で「私は」と書いた所は、私のことです。出所の名前を書いた所は、調べて確かめたことです。
先に、短い答え
- 「社会活動に参加した人のほうが、生きがいを感じている」という数字は、本当にあります。ただ、白書は「参加すれば生きがいが生まれる」とは書いていません。
- 国が対策の対象にしているのは、「望まない孤独」と「孤立」です。
- 分かれ目は、一人でいる時間の長さではなさそうです。自分で選んでいるか。困った時に頼れる先があるか。そちらのほうです。
1. あの数字は、何を言っているのか
「社会参加を」という文章の後ろには、よく、ひとつの数字があります。内閣府の『令和8年版高齢社会白書』に載っている数字です(令和7年版にも、同じ数字が載っています)。
直近1年間に何らかの社会活動へ参加した65歳以上の人のうち、生きがいを「十分感じている」または「多少感じている」と答えた人は84.6%でした。いずれの活動にも参加しなかった人を、23.0ポイント上回っています。
この数字を読んでも、私は、責められた気はしません。もう、この年になると、開き直って生きているので、「そういう人もいるよな」という感じです。
それでも、この数字が何を言っていて、何を言っていないのかは、白書を開いて確かめました。4つ、分かりました。
調べた相手は、65歳以上の人です。 図に載っている人数は、参加した人が1,692人、参加しなかった人が944人でした。60歳前後の人の数字ではありません。
白書が書いているのは、「上回っている」までです。 「参加したから、生きがいが生まれた」とは、書かれていません。もともと元気で、生きがいのある人のほうが、活動にも出かけやすい。そういう逆の向きも、この数字からは分けられません。
参加しなかった人も、約6割は、生きがいを感じています。 図の数字では、「十分感じている」が19.2%、「多少感じている」が42.5%。足すと、61.7%です(私が足した数字です。84.6%から23.0ポイントを引くと61.6%で、0.1の差は、四捨五入によるものだと思います)。
「活動」は、地域の会の役員だけではありません。 図の注を読むと、俳句や陶芸のような趣味も、体操や歩こう会も、園芸も、入っています。
参考になる数字です。けれども、「だから、全員が参加すべき」という所までは、この数字は言っていません。
2. 国は、「孤独」と「孤立」を分けている
「孤立を防ぎましょう」と言われる時の「孤立」は、「一人でいること」と、同じなのでしょうか。
国には、孤独・孤立対策の計画があります(孤独・孤立対策推進本部「孤独・孤立対策に関する施策の推進を図るための重点計画」)。そこに、言葉の分け方が書かれていました。
一般に、「孤独」は主観的概念であり、ひとりぼっちと感じる精神的な状態を指し、寂しいことという感情を含めて用いられることがある。他方、「孤立」は客観的概念であり、社会とのつながりや助けのない又は少ない状態を指す。
「孤独」は、気持ちです。「孤立」は、状態です。別のものとして、扱われています。
同じページに、こういう場合もある、と書かれています。
社会とのつながりが少なく「孤立」しているが、不安や悩み、寂しさを抱えていないため「孤独」でない場合もある
そして、対策の対象は、「望まない孤独」と「孤立」だ、とあります。脚注には、「望まない孤独」であるか否かの判断には慎重さが求められる、とも書かれていました。
「一人が好き」という言葉は、計画のどこにも出てきません。国が「一人が好きな人は、そのままでいい」と言っているわけではありません。言えるのは、国が相手にしているのは「望まない」孤独のほうだ、という所までです。
孤独を感じている人は、どのくらいいるのか
内閣府は、毎年、全国の16歳以上の2万人に、調査をしています(「人々のつながりに関する基礎調査」。令和7年の調査は、有効回答11,873件。令和8年4月に公表)。
孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた人は、全体で4.5%でした。50代は5.7%、60代は4.0%です。年代で比べると、いちばん高いのは30代(6.1%)で、いちばん低いのは70代(2.5%)でした。
ただ、60代でも、「時々ある」(11.7%)と「たまにある」(19.4%)を足すと、3人に1人あまりになります。「ほとんどない」「決してない」と答えた人は、60代で、合わせて64.1%です。

図表:孤独感を感じる人の割合(令和7年)
出典:内閣府「人々のつながりに関する基礎調査(令和7年)調査結果のポイント」
「一人でいることを選んだ人」は、問題なし、と言えるのか
この調査を読み解いた、有識者の文章があります(孤独・孤立の実態把握に関する研究会「調査結果に関する有識者による考察」令和7年10月。早稲田大学の石田光規さんの章)。
そこでは、困った時に頼れる人がいなくて、孤独感も無い人たちを、取り上げています。「自ら一人でいることを選んだ人」として、「問題なし」と見なされることが多い人たちです。
健康の状態と、暮らしの満足を比べると、この人たちは、頼れる人がいて孤独感の無い人たちより、どちらも低い、という結果でした。書き手は、こう結んでいます。
ここでは、一概に「問題なし」とは言い切れない、という指摘にとどめておこう。
気をつけたいのは、ここで言う「孤立」の測り方です。測っているのは、「困った時に頼れる人がいるか」です。一人で過ごすのが好きかどうか、ではありません。
一人が好きなことと、困った時に頼れる先が無いことは、別の話です。
3. 私の場合
私は、人の集まりにいると、どちらかというと、緊張します。帰ってきてから、疲れるほうです。いられないわけではありません。
一緒にいるのもいいけれど、一人でもいたい。そういう感じです。
あまり、外交的なほうではありません。外との接点を数えてみても、ひっそりと、オンラインだったり、スクールだったり。あんまり無いような気もします。
それでも、私は、二十年ほどオンラインゲームを続けています。画面の向こうには、二十歳も三十歳も年下の友人がいます。大きなコミュニティに所属しているわけでもなく、何百人と知り合っているわけでもありません。それでも、話したいときに話せる相手がいる。それだけで、ずいぶん心強いのです(この話は『趣味でつながる新しい世界』に書きました)。
体調を崩した時に、聞いてほしいと思える相手も、いたりします。
数は、多くありません。けれど、2で読んだ調査が測っていたのは、数ではなく、「頼れる人がいるか」でした。
一人の時間には、好きな精油を調合して、自分の香りを創ります。
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4. 一人の時間について、研究が言っていること
一人で過ごす時間の、良い面を調べた研究もあります。官庁の資料では、見つけられませんでした。大学の発表と、論文の要旨を読みました。
年を重ねた方を調べた、日本の研究(京都大学の豊島彩さん・楠見孝さん。2022年)は、「孤独を好む傾向」と、幸福感の関係を調べています。京都大学の発表には、こうあります。
「孤独を楽しむ」傾向がある人はそうでない人と比べ、ネガティブな感情を経験しにくいことが明らかとなりました。
同じ発表に、続きがあります。孤独を好む傾向は、孤独感の高さとも関連するので、孤独感が高まる場合、その効果は部分的だ、というものです。良い面だけではありません。
178人が、21日間、毎日の一人の時間を記録した研究(Weinstein ほか。2023年。Scientific Reports)は、「ちょうどよい一人の時間」を探しました。要旨には、こう書かれています。
- 誰にでも当てはまる「最適なバランス」の証拠は、見つからなかった。
- 一人の時間が長い日は、寂しさが強く、満足が低かった。
- ただし、その一人の時間が、自分で選んだものである時は、この不利は、消えるか、小さくなった。
- 一人の時間が長い日は、ストレスが低く、「自分で決めている」という感じが強かった。
2つの研究から言えるのは、ここまでです。
- 言えること=一人の時間には、良い面も、そうでない面もある。鍵は、「自分で選んだ一人かどうか」です。ちょうどよい量は、人によって違う。
- 言えないこと=「一人が好きな人は、幸せだ」。「人づきあいは、要らない」。どちらの研究も、そこまでは言っていません。
5. 自分に聞いてみる、4つの問い
自分が、どちら寄りなのか。確かめるための問いを、4つ置きます。
- 一人で過ごした一日を、あとから「よい一日だった」と思えるか
- 誰かと会って帰ってきたあと、心地よい疲れか、それとも消耗しているか
- 体調を崩したとき、連絡できる相手が一人でも思い浮かぶか
- 「誘われなかった」ことが気になるか、それとも気にならないか
私の答えです。
1つ目。一人でいた日も、良い一日だと思います。
2つ目。これは、会う相手によります。楽しかった、と思う日もあれば、「もう勘弁して」と思う時もあります。
3つ目は、上に書いたとおりです。
4つ目。若い時は、気になっていました。でも、もう、いいや、です。開き直る年になったのか、そういう状態になったのか。人は人、自分は自分、になりました。
1つ目に「思えない」と答えた時。3つ目に、誰も思い浮かばなかった時。寂しい、困っている、誰かに話したいのに、連絡できる人も場所も無い。そういう時は、「一人が好き」の話ではなく、2で読んだ「望まない孤独」や「孤立」のほうの話です。外との接点を、ひとつ増やすことを考える時だと思います。
どこに相談すればよいか分からない時は、内閣府の孤独・孤立対策のサイト「あなたはひとりじゃない」で、いくつかの質問に答えると、自分の状況に合った支援を探せます。電話なら、「よりそいホットライン」(0120-279-338。24時間・無料)があります。厚生労働省の「まもろうよ こころ」に載っている窓口です。
家族と同居していても、一人になれる時間が無いと、しんどくなってきます。家の中に自分の場所をつくる工夫は『同居でも「自分だけの空間」をつくる』に、夫婦の距離感については『夫源病になる夫の特徴とチェックリスト』に書いています。
6. 黙って作業する日
私は、家族と暮らしているので、挨拶くらいはします。本当に声を出していない、という日はありません。
ただ、ふつうの会話をしていない日は、最近はあります。一人でパソコンに向かって、黙々と作業しているからです。電話の仕事をしていたころは、話すのが仕事でしたから、そういうことはありませんでした。
「人と話さないと、口やのどが衰える」と、聞くことがあります。これも、確かめました。
言い切れる資料は、見つかりませんでした。
厚生労働省の「e-ヘルスネット」(「口腔機能の健康への影響」)が書いているのは、逆の向きです。
口腔機能が低下すると、「人前で食べるのが恥ずかしい」「話しづらい」などと感じるようになり、外出や人との交流を控える傾向がみられます。
口が衰えると、人と会うのを控えるようになる。そういう順番です。
口の小さな衰え(オーラルフレイル)は、学会の定義では、「改善も可能な状態」とされています(日本老年医学会など3学会の合同ステートメント。2024年4月)。食べにくい、話しにくい、口が乾く。そういうことが気になった時は、歯科で相談できます。
7. 断るのは、上手ではありません
私は、断れない性格です。
会うと疲れる人に「会おう」と言われて、会ったことがあります。しんどかったです。
何かを頼まれた時に、最初に「一度だけなら」と添えておく、という方法があります。私は、添えたことがありません。上手には、できません。
地域の活動は、自治会の班長で、回覧板を回すくらいです。そのくらいは、地域に住んでいるので、私か夫が、させていただいています。
断るのが苦手な方のために、言い方の例を、1つ置いておきます。「今回は、ここまでなら手伝えます」。できる範囲のほうを、先に言う形です。
線を引くことと、相手との関係を切ることは、別のことです。
8. 開き直れるようになったのは
開き直れるようになったのには、きっかけがあります。
体が、とてつもなく痛かった時期がありました。痛くなかったら、もう何でもいいや、と思いました。それなりにあった悩み事も、ぶっ飛んでしまいました。
あの試練で、一皮むけた気がします。
一人の時間のよくある質問
ここから先は、よく寄せられる疑問への答えです。私自身の体験のほかに、この記事で調べた資料と、公的な情報をもとにまとめました。参考としてお読みください。
Q1. 一人が好きなのは、おかしいこと?
A. おかしいことだとは、国の資料にも書かれていません。国の孤独・孤立対策の計画は、「孤独」(気持ち)と「孤立」(状態)を分け、対策の相手は「望まない孤独」と「孤立」だとしています。一人の時間についての研究では、その時間が自分で選んだものであるときは、寂しさなどの不利が、消えるか小さくなっていました。分かれ目は、一人の時間の長さより、自分で選んでいるか、困ったときに頼れる先があるか、のほうでした。
Q2. 一人が好きでも、ときどき寂しくなるのは?
A. 一人が好きでも、寂しさを感じることはあります。国の調査でも、孤独感をときどき感じる人は少なくありません。寂しい、困っている、誰かに話したいのに、連絡できる人も場所も無い。そういうときは、「一人が好き」の話ではなく、「望まない孤独」のほうの話かもしれません。相談先は、内閣府の孤独・孤立対策のサイト「あなたはひとりじゃない」や、「よりそいホットライン」(0120-279-338・24時間・無料)があります。
Q3. 誘いをうまく断るには?
A. この記事を書いた私は、断るのが上手ではありません。言い方の例としては、「今回は、ここまでなら手伝えます」と、できる範囲のほうを先に言う形があります。何かを頼まれたときに、最初に「一度だけなら」と添えておく方法もあります。線を引くことと、相手との関係を切ることは、別のことです。
まとめ|直さなくていい。ただ、ひとつかふたつ
「一人が好き」は、直さなければいけないことなのか。最初の問いに戻ります。
調べて分かったことを、まとめます。
- あの数字は、「参加すれば生きがいが生まれる」とは言っていない。 参加しなかった人も、約6割は、生きがいを感じています。
- 国が相手にしているのは、「望まない孤独」と「孤立」です。 「孤独」は気持ち、「孤立」は状態で、別のものです。
- 鍵は、自分で選んでいるか。そして、困った時に頼れる先があるか。 一人の時間の長さでも、知り合いの数でも、ありません。
私の答えは、こうです。一人が好きなことは、直さなくていい。ただ、頼れる先は、持っておく。
今日、誰とも話さなかったとしても、それだけで心配する必要はありません。困ったときに声をかけられる先が、ひとつかふたつあれば。あとは、自分の好きな距離でいい。私も、そうやって続けています。
参考にした公的なページ・研究(本文に出てきた順)
- 内閣府『令和8年版高齢社会白書』第1章第2節3「学習・社会参加」
- 孤独・孤立対策推進本部「孤独・孤立対策に関する施策の推進を図るための重点計画」(令和6年6月11日。令和8年7月10日一部改定)
- 内閣府「人々のつながりに関する基礎調査(令和7年)調査結果のポイント」
- 孤独・孤立の実態把握に関する研究会「人々のつながりに関する基礎調査 調査結果に関する有識者による考察」(令和7年10月)
- 京都大学「一人の時間を楽しむ高齢者は幸福感が高いのか ―孤独を好む志向性と主観的幸福感の関連―」(2022年2月21日)
- Weinstein N. ほか(2023)Balance between solitude and socializing: everyday solitude time both benefits and harms well-being. Scientific Reports.
- 内閣府 孤独・孤立対策推進室「あなたはひとりじゃない」
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」電話相談窓口
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「口腔機能の健康への影響」
- 日本老年医学会・日本老年歯科医学会・日本サルコペニア・フレイル学会「オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント」(2024年4月)
※調査の数字や計画は、新しくなることがあります。最新の内容は、それぞれの公式のページでご確認ください。













