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夫が家にいる日は、朝からなんとなく気が重い。「昼ごはん、どうする?」と聞かれるのが、しんどい。——夫源病のチェックリストの項目を1つずつ読んで、私は、体の不調を除いた7つに、気持ちは「分かる」と思いました。
では、私は夫源病なのでしょうか。
分かることと、私の暮らしがそのとおりであることは、別でした。この記事には、チェックリストと、よく挙げられる夫の特徴と、調べて分かったことと、わが家のことを書きます。
どちらが悪いか、という話ではありません。それは、最初に書いておきます。
1. 「濡れ落葉」という言葉から
定年後に家にいる夫を「濡れ落葉」と呼ぶ言い方が、昔、ありました。
この言葉は、1989年の新語・流行語大賞で、新語部門の表現賞を受けています。受賞したのは、樋口恵子さんです。賞の記録には、こう書いてあります。
趣味も無く定年を迎えた亭主は、ほうきにまとわりつく濡れ落葉のように、女房にまとわりつき
30年以上前から、同じことが言われてきたわけです。
小さな違和感が積み重なって、心や体まで重くなってしまう。それが、いま「夫源病」と呼ばれるようになった状態の、入口なのだと思います。
2. 夫源病とは(医学用語ではありません)
夫源病とは、夫が家にいることがきっかけで、妻が心身に不調を感じる状況を指す、俗称です。医学の病名ではありません。
生活のリズムが合わない。家事のやり方に口を出される。いつも見られているように感じる。そうした違和感の積み重ねが、頭痛・めまい・不眠などの不調につながることがある、と言われています。
つらい不調が続く時は、「夫源病だから」と俗称で片づけず、医療機関に相談してください。
立場が逆のこともあります。在宅になった妻との生活に、夫の側がストレスを感じる場合です。それは、『妻源病とは?』に書きました。
3. チェックリスト(気づきの目印として)
下のリストは、診断ではありません。医学的に確かめられた夫源病のチェックリストは、調べた範囲では見つかっていません。この名前を付けた医師ご本人も、もとの文章に「科学的な根拠は全くない」と書いています(調べた記録は『夫源病とは?なりやすい人・妻の特徴、かかったらどうすればいいかを本気で調べてみた』に書いています)。
暮らしの距離感を見直す、小さな目印として、眺めてみてください。
- □ 夫が家にいる日は、朝からなんとなく気が重い
- □ 「昼ごはん、どうする?」と聞かれるのが、正直しんどい
- □ 一日の生活リズムが合わず、自分のペースが乱れる
- □ 家事のやり方に口を出されて、もやっとすることがある
- □ 常に見られている気がして、気が休まらない
- □ 一人でぼんやりする時間が、めっきり減った
- □ 出かけたり趣味を楽しんだりが、前より億劫になった
- □ 頭痛・めまい・肩こり・眠りの浅さなど、体の不調を感じることがある
チェックした数は、数えなくて大丈夫です。相手を責めるためのリストでも、「私がわがままなのかな」と自分を責めるためのリストでもありません。
よく挙げられる「夫の特徴」
夫源病が語られる時、夫の側の特徴として、よく挙げられるものがあります。
- 定年の前と同じ調子で、家事に口を出す
- 妻の予定を、知らず知らず、自分を中心に組み立てる
- 家の中に役割がなく、手持ちぶさたになっている
これも、医学的に確かめられたものではありません。そして、「悪い夫」の欠点の一覧でもありません。長いあいだ、仕事という居場所で過ごしてきた人が、その居場所を離れて、戸惑っている姿でもあります。
4. 当てはまったら、夫源病なのか
私は、体の不調のほかの7つを、全部「分かる」と思いました。
気が重いのも分かります。「昼ごはん、どうする?」がしんどいのも分かります。一人でぼんやりする時間がほしいのも、分かります。
けれども、わが家の暮らしが、このリストのとおりかというと、それは別です。
わが家では、夫は、いまも外で働いています。在宅の仕事で、一日家にいるのは、私のほうです。「家にいる夫と、困っている妻」という形には、もともと、なっていません。
それでも「分かる」のは、なぜか。たぶん、このリストに並んでいるのが、夫のことではなく、「一人の時間がほしい」という気持ちのことだからです。私は、一緒にいるのもいいけれど、一人でもいたいほうです。
ですから、私の答えは、こうです。
当てはまる数は、夫源病かどうかを決めません。 決める物差しは、いまのところ、医学の側にありません。私の場合、このリストで分かったのは、「自分が、一人の時間をどのくらいほしいと思っているか」のほうでした。
5. 家事の数字を、確かめ直しました
リストには、家事のことも出てきます。夫婦の家事の分け方には、国の調査があります。国立社会保障・人口問題研究所の「全国家庭動向調査」です。
- 2018年の調査=妻と夫が行う家事の全体を100とした時の、分担の割合の平均は、妻83.2・夫16.8でした。
- 2022年の調査=報告は、妻の分担する割合について「いずれの調査年でも80%を超える」と書いています。
- 同じ2022年の調査で、「夫も家事や育児を平等に分担すべきだ」に賛成する妻は、86.7%でした。これまでの調査で、いちばん高い数字です。

図表:夫婦の家事の分担の割合(2018年の調査)
出典:国立社会保障・人口問題研究所「第6回全国家庭動向調査 結果の概要」
「平等に」と思っている妻が9割近く。実際の分担は、妻が8割を超える。そのあいだに、開きがあります。
ただし、この家事の数字には、但し書きがあります。 どちらの年も、妻の年齢が60歳未満の世帯だけを集計した数字です。妻が60歳以上の夫婦の家事の分担は、報告の概要には載っていません。定年のあとの夫婦がどうなっているかは、この調査の概要からは、言えません。
6. わが家でしていること、していないこと
していないこと
家事を紙に書き出す。月に1回、分担を点検する。2人の合意をメモにする。夫婦の距離の記事によく出てくる方法ですが、わが家では、どれも、したことがありません。
若いころは、夫とは会社の同期でしたから、特に決めずに、できる人が、できる時間に、やっていました。
していること
1つだけです。何かをやってもらったら、「ありがとう」と言います。感謝の気持ちを、伝えるようにしています。
相手は、違う人間です。頼んだことが、思ったような結果にならないこともあります。昔は、「どうして。こう言ったのに」と思うこともありました。
いまは、やってもらった以上は、その結果を受け入れる、と思えるようになりました。どうしても受け入れられない時は、自分でやるか、お金で解決します。
自分の世界を持つ
夫が仕事を辞めたあと、ずっと家にいたら、どうしよう。その気持ちは、私にもあります。だから、「私はいま、ここで忙しいからね」と言える世界を、持っていたいと思ってきました。
私にとっては、それが在宅の仕事です。机に向かって、その日の予定や体調に応じて、無理のない範囲で文章を書きます。ここは、私の場所です。
机の横には、大好きなミュシャの画集を置いています。
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私の「自分の世界」が、どうやっていまの形になったかは、『59歳で、70歳の自分が想像できませんでした』に書きました。
7. つらい時の相談先
- 頭痛・めまい・不眠などの不調が続く時=医療機関へ。
- 言葉の暴力や、身の危険を感じる時=内閣府の「DV相談プラス」(電話0120-279-889・24時間受付。チャットは12時から22時)。
夫源病チェックリストのよくある質問
ここから先は、よく寄せられる疑問への答えです。私自身の体験のほかに、質問サイトで見かけた考え方と、公的な情報をもとにまとめました。参考としてお読みください。
Q1. チェックリストに当てはまったら、どうすればいい?
A. 当てはまる数は、夫源病かどうかを決めません。医学的に確かめられたチェックリストは、調べた範囲では見つかっていません。私も、体の不調のほかの7つを、全部「分かる」と思いました。けれども、分かったのは「自分が、一人の時間をどのくらいほしいと思っているか」のほうでした。このリストは、診断ではなく、暮らしの距離感を見直す目印として載せています。頭痛やめまい、不眠などの不調が続くときは、医療機関に相談してください。
Q2. 夫の口ぐせや言葉がつらいときは?
A. 質問サイトで「夫の口ぐせ」と引くと、言葉の暴力に悩む相談が、上のほうにいくつも出てきます。怒鳴る、見下す、無視するといった言葉や態度が続くなら、それは口ぐせではなく、心理的な暴力にあたることがあります。その場合は、DV相談プラス(0120-279-889・24時間)に、一人で相談してください。そこまでではない口ぐせなら、言われたその場で言い返すより、一度その場を離れて体を落ち着け、落ち着いたときに「私は、その言い方だとつらい」と、自分を主語にして短く伝える方法があります。
Q3. 家事の分担は、どう話し合えばいい?
A. 国の調査では、家事の8割を超える分を妻が担う一方、「夫も平等に分担すべきだ」と考える妻は9割近くいました(妻の年齢が60歳未満の世帯の集計)。話し合うときは、作業をその都度頼むより、担当ごと渡すほうが、頭の中の負担まで減ると言われます。たとえば「火・金のゴミは、袋の交換から分別、ゴミ出しまで任せる」という形です。わが家は、分担を紙に書き出したことはありません。何かしてもらったら「ありがとう」と言い、やってもらった結果は受け入れる。どうしても受け入れられないときは、自分でやるか、お金で解決しています。
Q4. 「濡れ落葉」って、どういう意味?
A. 定年のあと家にいる夫を、ほうきにまとわりつく濡れた落ち葉にたとえた言い方です。1989年の新語・流行語大賞で、新語部門の表現賞を受けています。受賞したのは、樋口恵子さんです。30年以上前から、同じことが言われてきたわけです。
Q5. つらいとき、どこに相談すればいい?
A. 頭痛やめまい、不眠などの不調が続くときは、医療機関へ。どの科か迷うときは、まず、かかりつけ医に相談してください。言葉の暴力や、身の危険を感じるときは、内閣府の「DV相談プラス」(電話0120-279-889・24時間受付。チャットは12時から22時)に、一人で相談できます。身の危険が差し迫っているときは、110番です。
私の答え
- 当てはまる数は、夫源病かどうかを決めません。医学的に確かめられたチェックリストは、調べた範囲では見つかっていません。
- 私は7つとも「分かる」と思いました。分かることと、暮らしがそのとおりであることは、別でした。
- わが家でしているのは、「ありがとう」と言うことと、自分の場所を持つことです。
夫婦の距離の取り方は、ほかの記事にも書いています。
- 『夫源病とは?なりやすい人・妻の特徴、かかったらどうすればいいかを本気で調べてみた』
- 『妻源病とは?夫側のストレスを、夫源病を深掘りした私が公平に調べてみた』
- 『卒婚とは?離婚でも我慢でもない「第三の選択肢」と、向く夫婦・向かない夫婦』
- 『家庭内別居は「終わりの形」か?──設計された距離なら夫婦を守る技術になる』
- 『同居でも「自分だけの空間」をつくる』
この記事で確かめた文書
- 自由国民社「現代用語の基礎知識」選新語・流行語大賞第6回(1989年)
- 国立社会保障・人口問題研究所「第6回全国家庭動向調査結果の概要」(2018年調査)
- 国立社会保障・人口問題研究所「第7回全国家庭動向調査結果の概要」(2022年調査・2023年8月22日公表)
- 内閣府「DV相談プラス」
(確かめた日=2026年10月6日)
※本記事は医学的診断・治療の代わりになるものではありません。症状が続く場合は医療機関にご相談ください。













